エッセイ

【感想】オードリー若林「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」は紛れもない良書だった。

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読者
読者
今話題だから気になっているけど面白いのかな?
オードリーの若林さんってどんな文章書くんだろう?
かっぱ
かっぱ
面白いです!きっと手に取って読んでみたくなりますよ。
若林さんの文章はみずみずしい。思わず真似したくなる表現であふれています!<

 

こんにちは!この頃文章力を磨きたいかっぱ(@kappa_viola)です。

先日テレビを観ていたら、オードリー若林さんのエッセイ「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」が第3回「斎藤茂太賞」を受賞したと言うので、気になって読んでみました!

自分の文章力を磨くヒントにもなるかなと思ったんですよね。特にグルメとかのレビュー関連。

早速本を開いてみると、若林さんの人となりがよく表れた素敵なエッセイだったので、私なりの感想をお伝えできればと思います。

まだ読まれていない方は、若林さんの描く世界観に浸りたくなるはず!

それではいきましょう!

若林さんが受賞した斎藤茂太賞ってどんな賞?

前作『社会人大学人見知り学部卒業見込』から約4年ぶり、新作の舞台はキューバ!航空券予約サイトで見つけた、たった1席の空席。何者かに背中を押されたかのように2016年夏、ひとりキューバへと旅立った。慣れない葉巻をくわえ、芸人としてカストロの演説に想いを馳せる。キューバはよかった。そんな旅エッセイでは終わらない。

引用:「BOOK」データベースより

 

オードリー若林さんが受賞した「斎藤茂太賞」とは、一般社団法人日本旅行作家協会が創立会長の故・斎藤茂太氏の功績を称え、2016年に創設した賞です。

旅に関する優れた紀行文、エッセイ、ノンフィクションを表彰しています。

審査員を務めた作家の椎名誠さんは、若林さんの本書をまるで純文学のようだと評価しています。

(そういえば椎名誠さんの「岳物語」は子どもの頃よく読んだなぁ)

私も読了後まず感じたのは、若林さんの率直でみずみずしい文章が純文学で見るそれに近いということでした。

若林さんだからこそできる言葉選びや言い回し、擬人法が上手に表現されています。

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」は、キューバの情景が頭に浮かび自分も旅しているかのように心地よく読めるのも特徴です。

早速感化されてキューバに行ってみたくなりました(笑)!

 

本書は若林さんの心情で紡がれるみずみずしいエッセイ

 

新自由主義。

ぼくは20代の頃の悩みを宇宙や生命の根源に関わる悩みだと思っていた。それはどうやら違ったようだ。人間が作ったシステムの、一枠組みの中での悩みにすぎなかったのだ。

(中略)

とにかく、このシステム以外の国をこの目で見てみないと気がすまない。このシステムを相対化するためのカードを一枚手に入れるのだ。

引用:若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』KADOKAWA、2017年、31-33ページ

 

本書の中には、アメリカや日本に代表される「新自由主義」とキューバの「社会主義」の対比が何度か出てきます。

若林さんは今まで自分が見てきた国とは根本的に違う国を体験することで、若い頃から感じている窮屈さや将来への不安を取り除きたいと考えているのです。

だからこそ敢えて一人旅にし、観光客向けの場所だけでなく現地の人しか行かない空間へ訪れたいと望んでいます。

 

カバーニャの要塞で一番記憶に残っているのは一匹の野良犬だった。

真っ昼間の炎天下のカバーニャ要塞、死んでいるかのように寝そべっている野良犬になぜか目を奪われた。

(中略)

あの犬は手厚い庇護を受けていない。観光客に取り入って餌を貰っている。そして、少し汚れている。だけれども、自由だ。

引用:若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』KADOKAWA、2017年、77-78ページ

 

タイトルと同名の章。

キューバの道端に横たわっている野良犬と国を重ねて「自由の姿」を表現しています。

野良犬を羨む若林さんの気持ちがひしひしと伝わってくると同時に、小説的な文章に引き込まれます。

風刺とも捉えられるような印象的な一文です。

 

闘鶏場は木造のドーム形の建物だった。

中に入った瞬間、男たちの歓声と怒声の迫力に圧倒された。

感じたことのない異様な熱気。

会場内に充満する男性ホルモン。

歓声と怒声はドームの中心に向けられている。

引用:若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』KADOKAWA、2017年、132-133ページ

 

若林さんの描写で特に気に入ったのは、キューバの現地人しか立ち入らない闘鶏場の場面。

そこにはたくましい熱気と異様な別世界が感じられ、その場にいた若林さんの胸騒ぎが伝わってくるようです。

独特な言葉選びで一気に異空間へ引き込まれてしまいます。

 

親父が死んでから、ぼくは悲しみたかった。

(中略)

筋金入りのファザコンのぼくが、世界で一番の味方を失ったんだ。

一番の親友を失った。

引用:若林正恭『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』KADOKAWA、2017年、190ページ

 

終盤には若林さんの亡き父親との回想が出てきます。

東京では忙しいという理由だけでなく、悲しむことさえ自意識過剰になってできない若林さん。

キューバという日本から遠く離れた限りなく自由な国で、きっと存分に悲しみたかったんだと思います。

回想と現実の対比も見事に描かれていました。

 

総評

 

オードリー若林さんは芸人としても以前から好きでした。

その若林さんがどのような文章を書いて、名誉ある賞を受賞するまでに至ったのかを知りたくなったのです。

結果、非常に素敵なエッセイを読むことができて充実した時間を過ごせました。

とにかく繊細な言葉選びと言い回し。

若林さんの人見知りで他人を気にしちゃう性格。

そういったものが自分にも通ずるなと共感しながら読み進めていました。

素敵な文章に触れたので、少しでも取り入れて自分ならではの文章力を磨きたいと思います。

紛れもない良書でした。

 

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